ぽけもん擬人化とか出てくるので苦手な人は光の速さで逃げて下さい
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初めてその子どもを見た時、すぐさま思った。
"ああ、これはすぐに死ぬ"と。
怪我をしていたわけでもない、病に臥していたわけでもない。
ただ、瞳に宿る炎は、至極弱々しいものだったのを今でも覚えている。
あまりに儚いその炎が、まるで少しの光の前にも霧散していく霧のように見えた私はその子に"沙霧"という名を与えた。
これが、今から400年ほど前の話になる。
"ああ、これはすぐに死ぬ"と。
怪我をしていたわけでもない、病に臥していたわけでもない。
ただ、瞳に宿る炎は、至極弱々しいものだったのを今でも覚えている。
あまりに儚いその炎が、まるで少しの光の前にも霧散していく霧のように見えた私はその子に"沙霧"という名を与えた。
これが、今から400年ほど前の話になる。
沙霧は頭の良い子どもではあったが難点があった。
他人との衝突を避け、不必要なまでに己の本心を隠そうとする、子どもらしからぬ子ども。
私とて、未だにあれの考えていることはよく理解できない。
望みも言わぬ、不満も言わぬ。
他人の顔色の変化に敏感で、自主性が無いのかと思えばそうでもない。
ただただ、ひたすら『争い』を避け続けていた。
私にはそう見えたのだ。
あれに昔…私に出会うより昔に何があったのかは知らない。
恐らく尋ねても口を割ったりはしないだろう。
あれはそういう女だし、私もいい加減あれの性格を把握できているつもりだ。
それに私にとって、あれが私に出会う以前のことなどはどうでもよかった。
ただ、問題に思うのは沙霧の深すぎる慈愛、博愛、自己犠牲の精神。
あれを拾ったときに感じた弱々しい炎はまさにそれなのだと思う。
『争うことで誰かを傷つけるぐらいならば死んだ方がいい。』
馬鹿馬鹿しい。実に愚かだ。
何故、他人の保身の為に己の命を投げ出さねばならないのか理解に苦しむ。
完全なる輪廻転生を終えた今の私にとって死は幻想のようなものだが、死んだときの記憶は残っている。
あれは、二度体験したいと思うようなものではない。
進んで死を選ぶなどということは馬鹿のすることだ。
私は何度も沙霧にそう言った。
沙霧は、俯いたまま何も言わなかった。
とある次元を制しようと戦を始めた頃、私はその戦に沙霧を伴って赴いた。
類を見ない長い遠征だったが、その間、二度ほど沙霧が行方知れずになったことがある。
一度目はこちらの怠慢な神の力の巻き添え。
二度目は戦場にて敵方の先発隊の討伐へ向かわせたときだ。
あれが姿を消している間に何があったのかは私には分からない。
だが、戻ってきたあれの顔には迷いが見えた。
戦が終わり少ししてから、沙霧の周りに争いごとの種ともなる"他人"がいることが多くなった。
友人だと、あれは言っていたがその定義も私にはよく理解できない。
それらと何があったかは知らないが、沙霧がよく笑うようになったのを見て私は、放っておいてもいいだろうという妙な安心感を覚えた。
そんなものを感じてしまうあたり、私も相当に平和ボケをしている。
「あのとき、もう少しあれから目を離さなければ状況は変わっていただろうか?」
他愛ないそんな私の疑問に、長年連れ歩いている人物は答える。
「それは後悔だ。」
質問の答えになっていない。だが、間違ってはいないのかもしれない。
沙霧は、ある一人の男に裏切られ、殺されかけた。
男が狙うのは百と八の女の魂。
奴が言うには沙霧は最後の獲物だったらしい。
どんな目的があってそんなものを集めているのか私は知らないし興味も無い。
不穏な力を感じ、その場に駆けつけて見た光景、胸から血を流し今にも事切れそうな沙霧の姿とそれをただ笑顔で見下ろしている男。
そのとき私が感じた胸に渦巻く強い殺意、それだけがその場の全てだった。
その男を消すことは私にとって他愛ないことだった。
消そうと思えば一瞬で消すことができた。
だが、一瞬では私の気が済まない。
死んだ方がマシだという目に遭わせたい。
そんな強い衝動のままに私は男の体に炎を纏わせ、身を焼く熱に悶える男を切り裂く。
何度も何度も、死なない程度に。
「お願いします…あの人を殺さないで…。」
そんな、今にも消え入りそうな沙霧の声が、私の手を止めた。
ああまでされて、何故あれは人を憎むことができないのだろう。
何故、殺意は湧かないのだろう。
私ですら、その強い感情を抑制することはできないのに。
沙霧はひたすら、その男を封印するにとどめてほしいと私に懇願してきた。
数百年という長い時を共に過ごしてやっと聞けた、あれの初めてのわがままだった…。
男はもう一歩も動くことはできない。封印だけであれば沙霧一人でもできるだろう。
私は沙霧の傷を応急処置程度に塞ぎ、その場を去った。
持て余した衝動をぶつける先も無いまま、私は何日か飛び続けた。
それから少しして、沙霧は私の元から去った。
戻れという命令にも応じない。
戻る気は無いのだと言う。
いつの間にか生意気な口をきくようになったものだ。
「まるで親だな、今のお前は。」
また、いけ好かない相方が言う。
私が親だと?笑わせてくれる。
あれがいなければ戦も滞るし、何より落ち着かない。
ただ、それだけのことだ。
やがて、沙霧は大掛かりな結界を張ったのか、姿も気配も消してしまった。
小賢しいことだ。
小賢しい…だが、少しの間は、泳がせてやるのも良いかもしれない。
今日も翼を広げ、あれを探すフリをする。
きたるべき時が来るまでは、私も自由に過ごすとしようか。
----------------------------------------------------
さっちゃんの育ての親のホウオウ、八咫鳳来の視点でちょこちょこ打ちました。
色々詰め込んだら只の実況中継みたいなのになってしまいました。アチャー。
なんか知ったような口きいてますけどこの人ですらさっちゃんの本心はよく分かってません。
他人との衝突を避け、不必要なまでに己の本心を隠そうとする、子どもらしからぬ子ども。
私とて、未だにあれの考えていることはよく理解できない。
望みも言わぬ、不満も言わぬ。
他人の顔色の変化に敏感で、自主性が無いのかと思えばそうでもない。
ただただ、ひたすら『争い』を避け続けていた。
私にはそう見えたのだ。
あれに昔…私に出会うより昔に何があったのかは知らない。
恐らく尋ねても口を割ったりはしないだろう。
あれはそういう女だし、私もいい加減あれの性格を把握できているつもりだ。
それに私にとって、あれが私に出会う以前のことなどはどうでもよかった。
ただ、問題に思うのは沙霧の深すぎる慈愛、博愛、自己犠牲の精神。
あれを拾ったときに感じた弱々しい炎はまさにそれなのだと思う。
『争うことで誰かを傷つけるぐらいならば死んだ方がいい。』
馬鹿馬鹿しい。実に愚かだ。
何故、他人の保身の為に己の命を投げ出さねばならないのか理解に苦しむ。
完全なる輪廻転生を終えた今の私にとって死は幻想のようなものだが、死んだときの記憶は残っている。
あれは、二度体験したいと思うようなものではない。
進んで死を選ぶなどということは馬鹿のすることだ。
私は何度も沙霧にそう言った。
沙霧は、俯いたまま何も言わなかった。
とある次元を制しようと戦を始めた頃、私はその戦に沙霧を伴って赴いた。
類を見ない長い遠征だったが、その間、二度ほど沙霧が行方知れずになったことがある。
一度目はこちらの怠慢な神の力の巻き添え。
二度目は戦場にて敵方の先発隊の討伐へ向かわせたときだ。
あれが姿を消している間に何があったのかは私には分からない。
だが、戻ってきたあれの顔には迷いが見えた。
戦が終わり少ししてから、沙霧の周りに争いごとの種ともなる"他人"がいることが多くなった。
友人だと、あれは言っていたがその定義も私にはよく理解できない。
それらと何があったかは知らないが、沙霧がよく笑うようになったのを見て私は、放っておいてもいいだろうという妙な安心感を覚えた。
そんなものを感じてしまうあたり、私も相当に平和ボケをしている。
「あのとき、もう少しあれから目を離さなければ状況は変わっていただろうか?」
他愛ないそんな私の疑問に、長年連れ歩いている人物は答える。
「それは後悔だ。」
質問の答えになっていない。だが、間違ってはいないのかもしれない。
沙霧は、ある一人の男に裏切られ、殺されかけた。
男が狙うのは百と八の女の魂。
奴が言うには沙霧は最後の獲物だったらしい。
どんな目的があってそんなものを集めているのか私は知らないし興味も無い。
不穏な力を感じ、その場に駆けつけて見た光景、胸から血を流し今にも事切れそうな沙霧の姿とそれをただ笑顔で見下ろしている男。
そのとき私が感じた胸に渦巻く強い殺意、それだけがその場の全てだった。
その男を消すことは私にとって他愛ないことだった。
消そうと思えば一瞬で消すことができた。
だが、一瞬では私の気が済まない。
死んだ方がマシだという目に遭わせたい。
そんな強い衝動のままに私は男の体に炎を纏わせ、身を焼く熱に悶える男を切り裂く。
何度も何度も、死なない程度に。
「お願いします…あの人を殺さないで…。」
そんな、今にも消え入りそうな沙霧の声が、私の手を止めた。
ああまでされて、何故あれは人を憎むことができないのだろう。
何故、殺意は湧かないのだろう。
私ですら、その強い感情を抑制することはできないのに。
沙霧はひたすら、その男を封印するにとどめてほしいと私に懇願してきた。
数百年という長い時を共に過ごしてやっと聞けた、あれの初めてのわがままだった…。
男はもう一歩も動くことはできない。封印だけであれば沙霧一人でもできるだろう。
私は沙霧の傷を応急処置程度に塞ぎ、その場を去った。
持て余した衝動をぶつける先も無いまま、私は何日か飛び続けた。
それから少しして、沙霧は私の元から去った。
戻れという命令にも応じない。
戻る気は無いのだと言う。
いつの間にか生意気な口をきくようになったものだ。
「まるで親だな、今のお前は。」
また、いけ好かない相方が言う。
私が親だと?笑わせてくれる。
あれがいなければ戦も滞るし、何より落ち着かない。
ただ、それだけのことだ。
やがて、沙霧は大掛かりな結界を張ったのか、姿も気配も消してしまった。
小賢しいことだ。
小賢しい…だが、少しの間は、泳がせてやるのも良いかもしれない。
今日も翼を広げ、あれを探すフリをする。
きたるべき時が来るまでは、私も自由に過ごすとしようか。
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さっちゃんの育ての親のホウオウ、八咫鳳来の視点でちょこちょこ打ちました。
色々詰め込んだら只の実況中継みたいなのになってしまいました。アチャー。
なんか知ったような口きいてますけどこの人ですらさっちゃんの本心はよく分かってません。
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